水虫情報一本勝負
監修:斉藤隆三先生
東邦大学医学部皮膚科教授
気温が上がってくると、気になる水虫。現在、サラリーマンの約4割が悩んでいるといわれます。今年こそ治したいという方へ、役立つ情報をお届けします。
ジメジメした季節に注意
水虫(たむし)の正体は、白癬菌というかびの一種で、皮膚の一番外側の角質層に寄生しています。冬場のように低温で乾燥している状態では、なりをひそめていますが、春先から夏場にかけて高温でジメジメしてくると、増殖して患部を悪化させます。
角質層は、外部の刺激や雑菌から体を守るために、大変強固にできています。そのため、いったんそこに白癬菌が住み着くと薬が浸透しにくく、なかなか死滅しません。しかも、白癬菌の生命力は強く、はがれ落ちた皮膚の破片の中でも生きているといわれるほどです。
そのため水虫の治療には、角質層に成分がよく浸透して、効果を発揮する薬を選びましょう。症状が消えても、しばらくの間は根気よく手当てをすることも大切です。
白癬菌の性質
白癬菌は汚れを好み、温度15℃以上、湿度70%以上になると暴れ出すといわれています。ふだんから、患部の冷涼と乾燥、清潔を心がけましょう。
「かゆい」だけじゃない!
足がかゆいだけが水虫とは限りません。水疱ができたり、痛みが出たりする場合もあります。以下は水虫のタイプとその症状です。
趾間型
趾間(足指の間)に白色浸軟(ジュクジュク)をきたし、やがてびらん(皮膚が割れたり、むける)となり、その周辺に鱗屑(皮膚のカスがはがれる)が見られる。かゆみが強いが、びらんになると痛みが出る。2次感染を起こしやすい。
小水疱型
夏に多い型。かゆみが強い。軽度の発赤のほか、半米粒大の小水疱が密集したり環状に配列したりする。足にもっとも多く見られる。
角化型
足底全体に皮膚が乾燥し、カサカサした状態。かゆみは少ないが、角質の増殖が見られる。夏に悪化するが、冬でもかかる。治りにくい。
頭やからだ、爪にもできる
水虫(白癬菌)ができる場所は、足だけとは限りません。イラストのように、頭や体部にもできる可能性があります。
白癬菌が寄生する場所によって俗称があります。
頭部白癬
しらくもと呼ばれています。
体部白癬
小水疱性斑状白癬。タムシと呼ばれています。形が銭に似ていることから「ゼニタムシ」といわれています。
陰股部白癬
陰股部や臀部にできるのは「頑癬(がんせん)」。俗称「インキンタムシ」と呼ばれています。
足白癬
足にできるのが、一般にいう水虫です。
爪白癬
爪水虫。治すのに大変苦労するタイプです。
本当に水虫ですか?
「足がかゆい」「足の皮膚にポツポツとした穴ができた」からといって、水虫とは限りません。水虫に限らず皮膚病は、症状を見ただけでは判断に迷うものです。
間違った手当をすると、かえって症状を悪化させる原因にもなります。
とくに手や足にできる皮膚病は、貨幣状湿疹や接触性皮膚炎のように、水虫によく似た症状が多いもの。水虫も皮膚病も、正しい症状の判断、正しい薬の選択が治療の基本です。
水虫とよく似た症状に注意!
接触性皮膚炎
原因物質に接触することで起こる皮膚病。いわゆるかぶれのこと。かゆみ、ときには痛みもある。
貨幣状湿疹
円形の湿疹病変。しょう液性丘疹(ジュクジュクした腫れ)と鱗屑(皮膚のはがれ)がみられ、しばしば湿潤する。かゆみを伴い、乾燥する冬にできやすい。
カンジダ症
カンジダ菌の感染症。
紅斑、鱗屑、小膿疱、びらんがみられる。かゆみを伴い、夏に汗をかくときに多い。
掌蹠膿疱症
小水疱を多発して、ただちに膿疱となる。膿疱内に細菌は認められない。難治性の皮膚病。
アトピー性皮膚炎
かゆみが強く、とくに小児に多い。 乾燥型から湿潤型までさまざまな程度の症状がある。
脂漏性湿疹
境界は明瞭だが、白癬のような輪郭がない。季節に関係なく発症する。
治療には根気が必要
水虫は完治させるまで時間のかかる病気です。まずは、症状に合わせた薬を選ぶことが大切です。また、症状を悪化させないよう、ふだんの生活にも注意しましょう。
水虫治療4つのポイント
- 冷涼
水虫は高温多湿が大好き。とくに、炎症したりハレたりしたときには、乾燥と同時に患部を冷やします。 - 乾燥
水虫は高温多湿が大好き。とくに、炎症したりハレたりしたときには、乾燥と同時に患部を冷やします。 - 清潔
患部はいつも清潔に。
刺激の少ない専用の石けんで洗いましょう。 - 根気
水虫はしぶとく、再発しやすい病気です。かゆみや痛みなどの自覚症状がなくても、しばらくは治療を続けましょう。根気が大切です。
症状に合わせて薬を選びましょう
- ハレや痛みのあるときは、その原因を取り除いてから水虫の手当をします
- カサカサ型の水虫には液剤かクリーム剤
- ジュクジュク型には軟膏を
白癬をもっと知ろう
日本医真菌学会の調査では、皮膚科外来患者の原因の11.3%が白癬、0.96%がカンジダ症と報告されています(全国15施設の集計)。白癬の部位別発症率は以下のとおりです。
足 | 64.4 |
爪 | 20.1 |
体部 | 7.5 |
股部 | 5.0 |
手 | 2.6 |
その他 | 0.3 |
(平成8年度調査)
グラフからわかるように、病院に来る真菌症者の内訳は、白癬症が88%と圧倒的です。
白癬症の原因となる菌のうち、T.rubrum(紅色白癬菌)は白癬菌全体の約70%を占め、陰股部白癬、爪白癬、足白癬の角質増殖型にみられます。紅斑、落屑、頑癬型症状をとりやすい傾向があります。
T.mentagrophyes(毛そう白癬菌)は白癬菌の28%を占めています。老人に多く、班状の症状をとりやすいといえます。
そのほか、M.Canis(犬小胞子菌)は動物由来の白癬菌。炎症症状が激しく、とくにペットのネコに多くみられます。家庭内感染を起こしやすいので、注意が必要です。
また、C.albicans(カンジダ菌)は生体側の全身的あるいは局所的抵抗力の衰弱に乗じて病原性を発揮し、皮膚に炎症を起こします。頸部、乳房の下、腋の下、陰股部、指間など、間擦部に発生しやすいという特徴があります。
清潔、乾燥で感染を予防
5人に1人とも、4人に1人ともいわれる水虫患者。とくにサラリーマンの場合は、4割の人(2.5人に1人)が水虫だといわれています。困ったことに、水虫は感染します。
水虫の人の皮膚からはがれ落ちた角質層には、水虫菌(白癬菌)が生きたまま残っています。
これを他の人が裸足で踏みつけたり、足ふきマットやスリッパを共用したりすると、水虫が移ることがあります。家族に水虫に患った人がいる場合は要注意です。
しかも、気密性の高い最近の住宅は、人と同様にカビにとっても暮らしやすい環境です。水虫菌は、人に寄生するチャンスをいつもうかがっているのです。
治療・予防のための日常生活の注意点
水虫の治療と予防をするために、日常生活で気をつけなくてはならないことを、以下にまとめました。
- まずは水虫患者本人の治療が第一。効果の高い水虫薬を、少なくとも2か月以上はつけ続けましょう。
はじめは熱心に治療していても、かゆみが消えると怠りがちになります。大切なのは「根気」です。 - 患者本人はもとより、家族の方も足を清潔に保つことが肝心。手洗いやうがいと同様に、帰宅後に足を洗う習慣をつけましょう。手間はかかりますが効果は大です。
- こまめな掃除と湿気の除去で、家屋に潜む水虫菌をできるだけ減らしましょう。洗面所、脱衣所などの水回りや、スリッパ、寝具等はいつも清潔にし、乾燥に留意します。
毎日のフットケア
水虫の治療には、正しいフットケアが大切です。
足を洗うとき、ゴシゴシこすっていませんか?
力を入れすぎるとかえって皮膚を傷つけて、水虫菌を入り込みやすくしてしまいます。石けんを使い、水やぬるま湯で、やさしくなでるように隅々まで洗いましょう。
洗い終わったら、清潔なタオルで水分をしっかりふきとります。
この状態で水虫薬をつけるのが、もっとも効果的です。
【このタイプの足に要注意】
以下のような条件にあてはまる方は、水虫にかかりやすく、また治りにくい足のタイプです。
- 足の指をあまり動かせない
- 足全体がズングリ丸い
- 指と指の隙間がない
- 指先が太くて短い
- 外反母趾である
など
このようなタイプの方は、毎日のフットケアをとくに念入りにし、水虫の予防に努めましょう。